糖質制限という言葉に潜む罠。糖質制限ダイエットに失敗する理由
2016/03/09
糖質制限ダイエット、低糖質ダイエット、低炭水化物ダイエットなどなど。
呼び方は異なりますが、いずれも糖質をカット(制限)することで効果的に痩せることを目指したダイエット法です。
ここ数年で大きな流行を見せたこのダイエット法、実際に痩せたという声もたくさん聞きますが、それと同じくらい失敗したという声も多く聞きます。
同じダイエットを行っているにもかかわらず結果の出る人と出ない人がいる。これはどうしてでしょうか?
もちろん個々人の体質の違いによる個人差と考えることもできるでしょう。でも、どうやらそれだけではなさそうです。
私自身、糖質制限ダイエットというものには興味があっていろいろ調べてみたのですが、この糖質制限というダイエット法、どうにも情報が錯綜しているような印象を受けます。
「糖質制限」というひとつのワードが、まったく異なる別のダイエット法を指し示しているかのような、そんな曖昧さを感じたわけです。
しかも、これらの乱立する糖質制限法の中には、ある特定の条件下でないと成立しない、それどころから、使いどころを間違えてしまうとかえって太ってしまうようなものも含まれていました。
おそらくですが、糖質制限をして失敗したという人の中には、こういった情報に振り回されて失敗してしまった人が相当数いるのではないかな、と。
というわけで、本日はそんな糖質制限ダイエットの情報を整理しつつ、ありがちな誤解や失敗する原因について見ていきたいと思います。
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Contents
2つの糖質制限ダイエット
冒頭にて「糖質制限」というワードには、異なる複数のダイエット法が混在していることを述べさせていただきました。この複数のダイエット法というのは、糖質をどの程度制限するのかによって生じる違いとお考えください。
この記事では簡略化のために、糖質制限を「ゆるい糖質制限」と「ハードな糖質制限」の2つのタイプに分けて解説を行っていきます。
「ゆるい糖質制限」は糖質の量は減らすけれども、ある程度の糖質摂取を許容する制限方法。
一方、「ハードな糖質制限」では摂取する糖質の量を極力ゼロに近づけることを目指します。具体的には一日の糖質量を20g程度に抑える制限方法です。糖質制限の第一人者である江部先生が提唱する「スーパー糖質制限」がこれに該当します。
2つに分けた理由は、それぞれの糖質制限において裏づけとなる理論がまったく異なってくるからです。
一般的なダイエット法で使われている理論は、カロリー理論と呼ばれているものです。摂取カロリーに対して消費カロリーの方が大きければ痩せる、その逆なら太るといった、皆さんもご存知のアレですね。
カロリー理論のポイント
摂取カロリー>消費カロリー → 太る
摂取カロリー<消費カロリー → 痩せる
先ほどの分類のうち、「ゆるい糖質制限」の方はこのカロリー理論に根付いたダイエット法といえます。
私たちが摂取するカロリーのうちの大部分を占める糖質(炭水化物)を制限することで、全体的な摂取カロリーを抑制できる。結果として痩せることができるといった理屈なわけです。
体内のエネルギーサイクル自体を変えてしまうハードな糖質制限(ケトン体ダイエット)
一方で「ハードな糖質制限」では、カロリー理論とはまったく異なるロジックによってダイエット実現を目指します。
このカロリー理論とは別のロジックについては説明するのがなかなか大変なのですが、一言で言えば、体内のエネルギーサイクル、脂肪燃焼の仕組み自体を変えることによるダイエット理論です。
以下、ちょっとややこしい話にもなりますが、糖質制限ダイエットを考える上でめちゃくちゃ重要な話ですのでお付き合いくださいませ。
糖質が肥満ホルモン「インスリン」を呼び起こす?
糖質制限で痩せるということは、裏を返せば糖質をとると太るということ。では、なぜ糖質をとると太るのでしょうか?
食事によって炭水化物(糖質)を摂取すると血糖値が上昇し、すい臓からインスリンが分泌されます。
インスリンは血糖値を下げたり、筋肉や内臓が糖を取り込む手助けをしたりといった大事な役割を持っているのですが、それと同時に余っている糖を脂肪として蓄える働きも持っています。
さらには脂肪の分解(脂肪燃焼)を抑制するし、痩せにくくするなんて働きもあったり。
脂肪を蓄え、痩せにくくする。こういった作用を指して、インスリンのことを肥満ホルモンと呼ぶ方もいます。なんとも嫌な響きですね。
さて。ダイエットをする上で厄介な存在であるインスリンですが、このインスリンが分泌されるのは糖質を摂取したときだけです。たんぱく質や脂質を摂取した場合には、インスリンは分泌されません。
糖質制限を理解する上で、この事実は重要です。
ここまでの内容をまとめましょう。
糖質をとると太る理由
- 糖質をとるとインスリンが分泌される
- インスリンは脂肪を蓄える働きを持つ
- たんぱく質や脂質をとってもインスリンは分泌されない
炭水化物(糖質)をカットすることは、肥満ホルモンであるインスリンの分泌を抑える効果がある。糖質制限ダイエットは、これを利用したダイエット法だということです。
糖質制限以外のダイエット法では、GI値の低い食品を利用する低インスリンダイエットなんかも同じ仕組みを利用したダイエット法となります。
ケトン体をエネルギー源に! ケトーシス状態になろう
糖質制限で痩せる理由は他にもあります。
ブドウ糖の元となる炭水化物。この炭水化物をとらない生活を続けると、いずれ体内からブドウ糖が枯渇してしまいます。この血中ブドウ糖が枯渇していまうという点がポイント!
体や脳を動かすエネルギー源であるブドウ糖。そのブドウ糖が枯渇してしまうなんて大変だと思われた方。ご安心ください。
人体というのは私たちが考えている以上に優秀なようで、糖質がない場合はその代わりのエネルギー源を用意する仕組みがあらかじめ備わっているのです。
その代替エネルギーというのが、この項目の見出しにもあるケトン体です。
このケトン体という物質、なんと脂肪を分解することによって生成される物質なんです。
つまり、ケトン体をエネルギー源として使用している状態というのは、脂肪を効果的に燃焼できている状態といえるわけですね。
糖質制限で痩せることができる最大の理由はコレです。従来のブドウ糖を中心としたエネルギーサイクルから、ケトン体を中心としたエネルギーサイクルにすることで、効果的に脂肪を燃やすことができるわけです。
とはいうものの、生半可な糖質制限では意味がありません。
ケトン体をエネルギーとして使える状態(血中のケトン体濃度が上がっている状態)のことをケトーシスというのですが、このケトーシス状態になるためには、約2週間ほど糖質ゼロに近い生活を続ける必要があります。
一食だけご飯抜きとか、そういった「ゆるい糖質制限」ではダメです。一日の糖質摂取量を20g以下に抑える「ハードな糖質制限」を2週間行う必要があります。
これによって体内のエネルギーサイクルがブドウ糖メインの状態からケトン体メインの状態に切り替わり、脂肪が燃えやすい体になるというわけです。
糖質制限で痩せるまでのプロセス
- 厳密な糖質制限(一日あたり糖質20g以下)を行い、血液中のブドウ糖を枯渇状態にする
- 代替エネルギーとしてケトン体が使われるようになる(切り替えに2週間程度かかる)
- ケトン体の生成過程で脂肪が分解されるので、痩せやすくなる
ざっくりとした説明でしたが、糖質制限が従来のダイエット法とまったく異なることがお分かりいただけたでしょうか?
カロリー理論がエネルギーの収支に注目しているのに対して、糖質制限ではエネルギー源そのものを変えてしまうことで痩せやすい体にしていくわけです。
糖質制限において摂取カロリーは気にしなくて良いといわれるのはこういう理由。
糖質制限でよくある誤解・失敗例
以上の理論を踏まえた上で、糖質制限でやってしまいがちな失敗について分析していきましょう。
いろいろ調べてみた結果、糖質制限の失敗例として多いのは下記の2パターン。
- 自分のやっている糖質制限が何を目的としているのか理解していない
(カロリー制限なのか、ケトーシス狙いなのか) - 糖質に対する無知・無理解
この他にも意思が弱いことによる実行力不足とか、糖質制限をしたあと急に通常食に戻したことによるリバウンドとかあるでしょうが、このあたりは一般的なダイエットにもあてはまる失敗ですので、この記事では割愛します。
何を目的とした糖質制限なのかを把握する
これまで説明してきたように、糖質制限はそのやり方によって、痩せる仕組みというものがまったく異なってきます。
ご飯だけ抜くというような「ゆるい糖質制限」はカロリー理論に基づいたダイエット。一日あたりの糖質摂取量をゼロに近づける「ハードな糖質制限」は、体質改善(ケトーシス)を目的としたダイエットです。
糖質制限でよく言われる「糖質さえ取らなければ、好きなものを食べてよい。カロリーは気にしなくて良い」というのは、後者の「ハードな糖質制限」を行った場合のみあてはまります。
前者の「ゆるい糖質制限」では、インスリンの分泌を抑制する効果も弱いですし、体内で使われるエネルギーがブドウ糖からケトン体に切り替わることもありません。
要するに「ゆるい糖質制限」では、過剰なエネルギーは脂肪として蓄えられる体質のままですので、摂取カロリーが増えれば増えた分だけ脂肪が増えて太ります。
このあたりをごっちゃにして、カロリー過多で太ってしまう人が結構いるそうです。
というわけで、糖質制限ダイエットを成功させたければ、自分が行っている糖質制限が何を目的としているのか、どういった理屈で痩せることができるのかをキチンと把握しましょう。
ちなみにですが、主食(ご飯・パン)を断ったくらいでは、体質改善狙いの「ハードな糖質制限」にはなりませんのでご注意を。
このあたりについては次の項目で説明していきます。
糖質に対する無知・無理解
糖質に関する知識不足も糖質制限を失敗させる大きな要因のひとつです。
ご飯やパンさえ抜けば糖質制限になると思われている方が結構な割合でいらっしゃいますが、体質改善(ケトーシス)を目的とした糖質制限の場合は、これだけでは不足です。
そもそも皆さん、糖質(炭水化物)といわれて、どんなものを思い浮かべますか?
ご飯、パン、ラーメンやパスタなどの麺類。このあたりまではスラスラ出てくるでしょう。
お菓子やジュースなども砂糖がふんだんに使われていますので、糖質制限中はNGです。
このあたりまでは多くの方が思いつくことができるでしょう。
では、糖質の多い野菜・少ない野菜の区別はつきますか?
芋類(じゃがいも、さつまいも)や根菜(ニンジン、レンコンなど)の類は糖質が多い野菜なので、糖質制限中は控えるべき野菜です。
トマトも通常の品種であればOKですが、甘く品種改良されているようなものだとNGになる場合もあります。
低糖質な食材の代表格である魚類ですが、加工食品の中には糖質高めのものもあるので要注意。ちくわ、魚肉ソーセージなどは糖質制限中には避けたほうが良い食材です。
食材としては低糖質でも、調理法によって糖質が多くなってしまうものもあります。
卵自体は糖質の少ない食材ですが、卵焼きにする際に砂糖を入れてしまえば当然アウト。外食で出される卵焼きは結構甘めの味付けが多いので、まぁ、だいたい砂糖が入っていると思っていたほうが良いです。
糖質の少ないお肉を食べようと焼肉屋にいったら、焼肉のタレに糖質が含まれていました、なんてオチもありえますね。
まぁ、何が言いたいかというと、厳密な意味での糖質制限は、素人がそう安易に手を出せるほど簡単ではないっていうことです。
糖質制限を成功させたいのであれば、事前に充分なリサーチを行うか、さもなくば栄養士などのプロの方の協力を仰ぐべきですね。糖質制限ダイエットは世間で言われているほどお手軽なダイエット法ではないと思います。
結果にコミットでおなじみのライザップでも糖質制限食は採用されてますが、あれも管理栄養士の方が担当について行っていますからね。
余談ですが、ライザップでは入会前の無料カウンセリングを実施しているそうです。
理想とする身体におうじて、トレーニングメニューの設定はもちろのこと、食事内容なども相談に応じてもえらえるそうなので、糖質制限食に興味がある方は、プロの知識を盗むつもりで申し込んでみるのも手かもしれません。