黒色ワナビーの住処

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第三回将棋電王戦における『やねうら王レギュレーション違反』問題について

      2015/06/18

第三回電王戦の一局目が終わりました。

結果は習甦の勝利。開発者の竹内章さん、おめでとうございます。
菅井竜也五段にとっては残念な結果でしたが、非常に白熱した対局を見せていただきました。今後のご活躍を期待しています。

さて、対局自体は先に述べたように素晴らしい内容だったのですが、その後の展開がどうにもいただけない。

電王戦では、対局終了後に次局のPVを流すのですが、その後半の内容がどう見ても、やねうら王、っていうか開発者の磯崎さんに対する弾劾裁判。

詳細はこちらの記事と、実際に公開された第二局のPVをご覧頂くとして、この件に関する私個人の所感などを少し。

この件がニコ生で発表された当初から、周囲の反応としては「運営側が用意した台本だろ」という意見と、「台本にしては後味が悪すぎる。流石にこれはガチではないか?」という意見に分かれていました。

実際のところ、本件がドワンゴサイドがエンタメショーとして用意したブックなのか、ガチのレギュレーション違反なのか分かりません。

ただ、仮にこれがブックだとした場合、それは興行として許される範疇の「やらせ」を超えているな、といった印象です。

個人的に許せないという思う「やらせ」の要素は次の二点。

1:対局の結果そのものに影響を与えるやらせ
2:プロ棋士および将棋ソフト開発者の尊厳を損なう恐れがあるやらせ

もし今回の一件が演出の一環、台本の類だとした場合、上記の二点、両方ともに触れることになる。電王戦を楽しみにしていた人間として、それだけはあって欲しくない。

以下、個人的な願望も込めて、本件はガチであるとして話を進めます。

 

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まず、第三回電王戦のレギュレーションの確認。

出場ソフトのプログラム状態
電王戦への出場権を獲得したプログラムは、上記「将棋電王トーナメント」出場時のプログラム状態にて出場する。ただし棋譜を利用した自動学習は可とし(カワンゴ談)、バグ修正は不可。使用するOSのプラットフォームは制限なし。
(前回は直前まで開発者側がアップデート・バグ修正を自由に加えられた)

ニコニコ大百科の第三回電王戦の記事からの今回の件に関連する項目だけを引っ張ってきました。

当初のレギュレーションでは、バグ修正を含めた一切のアップデートを認めないという条件だったようです。

ところが現実には磯崎さん側の「動作を安定させるためにバグを修正したい」との要望に応じる形で、ドワンゴ側はソフトの差し変えを認めたようです。

まずこの時点で問題一。事前決定でバグ修正を認めないとしていたにも関わらず、やねうら王の改修を認めてしまっている点。

本番でフリーズなどされては、電王戦そのものに水を差すことになるので、可能な限り安定したバージョンで対局して欲しいという主催者側の考えも分かりますが、だからといってホイホイとルールを変えられていては事前取り決めの意味がなくなります。

「バグ修正を認めない」かつ「本番での対局をキッチリ終えて欲しい」と考えるのであれば、本番中にバグが発生した場合の裁定を事前に決めておくべきだった。

バグで継続不可能になった時点でコンピュータ側を失格にする、一定のペナルティを与えた上でバグが発生した局面を手動で抜け出し対局を継続する、そういった備えをせずに安易にバグ修正不可のルールを作り、あげく都合が悪くなったら、軽々とそのルールを破る。この一連の流れは明らかに運営側の落ち度だと思います。

さらに話は続くのですが、運営サイドから「棋力に影響を与えない範囲で」という条件のもと修正を行ったにも関わらず、佐藤紳哉六段側から「明らかに強くなっている」との指摘が出ます。

この件に関して佐藤紳哉六段側は「開発者の人にとっては、どこをどう弄ったら強くなるとか事前に分かっているんじゃないか?」、磯崎さん側は「評価関数が同じなのに指し手や棋力に影響が出るとは思えない」と主張。

おまけで一部の外野のリアクションを拾っておくと、「安定化目的のバグ修正で棋力が向上するわけねーだろ。悪意を持ってやったに決まっている」みたいな感じの意見もありました。

でだ。そもそも論として『棋力に影響を与えないバグ修正』なんて現実に可能?

自分はプログラムに関しても、コンピュータ将棋に関しても門外漢だけど、バグで一部の機能が正常に動作しておらず、それによって動作が不安定化していた。そのバグを修正し、不安定だった機能を安定化させた結果、全体の能力が向上した、なんていう話は普通にあり得ることのように思えます。

そうじゃなくてもコンピュータ将棋の棋力というのは非常に繊細かつ混沌としたものです。

他のソフト開発者様のインタビューを目にする機会が何度かあったのですが、強くなると思って行ったアップデートでかえって弱くなったり、あるいはその逆の場合が起こったりということは日常茶飯事のようです。

変更に伴う影響が不確定なことは、関係者なら事前に予想がついたはず。にもかかわらず、安易に「バグ修正なら可」と認めてしまったドワンゴ側は、流石に軽率だと言わざるを得ないでしょう。

仮に修正を認めるとして、バグ修正として認められる範囲を明確化する、修正範囲が適切かを第三者に確認してもらう、修正後の棋力に変化がないか事前のテストを行うなどの対応を行うべきでしょう。

それらを怠り、佐藤六段側には「バグ修正しましたが棋力は変わりませんよ」と伝えて渡したのであれば問題です。プロ棋士および開発者双方の信頼関係に大きな傷をつけることになりかねません。

PVにおける佐藤六段の発言の中には、かなり痛烈に磯崎さんを批判したものも含まれます。

(これが台本で無ければ)両者の関係には修復不可能なレベルの溝が出来てしまったと言えるでしょう。

磯崎さんの軽はずみな発言が招いた部分も大きいでしょうが、運営側の管理監督の不行き届きによる影響も大きいと考えます。

っていうか、記者会見でこういう内容を流すにも関わらず、当事者である磯崎さんが居ないってどういうことだよ。弾劾裁判かつ欠席裁判って……。

ちなみに磯崎さんの軽はずみな発言について補足。

正直、PVを見たことによって磯崎さんに対しての心証は大分悪くなりました。

その上であえて好意的な解釈をすると、磯崎さん側はどうも本件をそれほど問題とは捉えていなかったような感じなんですよね。問題を起こしたという認識がないから、普段のノリであんな軽率な発言をしてしまった、と。

そもそもレギュレーションにあるソフトの現状維持という項目についても認識の齟齬があったように思えます。

磯崎さんの発言の中に「やねうら王は以前はもっと強かった」という言葉が繰り返し出てきます。

この辺りの認識が今回のすれ違いの元というか何というか……。

棋力を変えないという条件に対して、佐藤さん側は当然今自分が指しているソフト(磯崎さん側のいう弱くなった状態)をイメージしますが、磯崎さんとしては元々強かったものがバグによって弱くなっているのだから、バグ修正によって強くなってもそれは現状維持のうちだよ、という認識が少なからずあったように思えます。

まぁ、第三者目線で見れば佐藤さん側のスタンスが正しいというか、バグで弱くなっているとしても、その弱くなった状態が実力。そのバグを大会までに取り除けなかったのは開発者側の力不足のせいということになると思うのですが……。

その辺りの認識をすり合わせることなく進んでしまったんだろうな、この惨状を見ると。

とにかく一刻も早く磯崎さんサイドの弁明を聞きたい所存です。

しかし、うーむ。

「やらせ」にしては酷過ぎるのでガチという前提の下に自分の意見をタラタラと書いて見ましたが、ガチならガチでやっぱり酷いよなぁ、これ。

とりあえず楽しみにしていた電王戦に泥を塗られてしまったことが、率直に残念です。このイザコザが余計な尾を引かないことを願います。

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